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ベストドクターズ選出医インタビュー詳細

Treat to Target(目標に向けた治療実現)
進化する関節リウマチ治療の標準化を目指す

慶應義塾大学医学部 リウマチ内科教授
竹内 勤 先生

より早期に切れ味のよい抗リウマチ薬で治療し、関節破壊を防ぐ――関節リウマチに対する治療戦略は大きく様変わりしている。ここ数年の間に、国際的には、分類基準の見直し、治療目標の導入、寛解基準の改定が次々に行われ、診断から治療効果の判定までのプロセスを、より客観的、科学的に進めることが可能になった。しかし、国内のすべての患者がその恩恵を享受しているとは言い難い。世界水準の治療をいかに浸透させるか。今後の課題と動向を竹内勤先生に伺った。

アメリカとヨーロッパのリウマチ学会が合同で23年ぶりに新基準を発表

 「寛解(かんかい)が現実的な目標になるなんて、以前は夢のまた夢でしたね」。80年代、まだ大学院生の頃の関節リウマチに対する治療を思い返す。「外来は、痛い痛いという患者さんでいっぱいでした」。痛みや炎症を抑える効果的な薬はなく、最終的にステロイドに頼る治療では、患者の骨はもろくなり、いずれ関節破壊が進み、圧迫骨折を起こして寝たきり、という経過も少なくなかった。膠原病の中でも関節リウマチは難敵であり、最も治りにくい病気だった。
 しかし、20年余りの間に関節リウマチは、医師には何の手立てもない病気から、いまや医師の腕一つでコントロール可能な病気になった。
 そこにはメトトレキサート、そして、より標的を絞りこんで攻撃できる生物学的製剤といった薬物治療の進歩が大きく寄与している。リウマチ内科医である竹内先生が専門とする分野の研究が次々と臨床に反映された結果だ。
 「多くの臨床研究により、発症早期、2年以内に関節破壊が進むことが分かってきました」
 可能な限り早期に診断し、同時にメトトレキサートなどの抗リウマチ薬を用いる。それによって、関節破壊が食い止められることが明らかになった。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)から始め、徐々に強い薬に変えていくという従来の治療とは、考え方が一変した。
 早期診断の重要性を踏まえ、2010年、23年ぶりに、アメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会が合同で、新基準を発表した。関節所見、血清学的検査、滑膜炎の期間、急性期の炎症反応の4項目について、症状をスコア化するものだ。竹内先生は、これを日本でも採用すべきかどうかの検証作業の責任者を担当した。そして浮かび上がったのが鑑別診断の重要性だ。痛風をはじめ、その他のリウマチ性疾患などとの鑑別が必要になるという。「深刻なのは、内臓病変が隠れた関節リウマチ以外の膠原病だった場合」。そこで、竹内先生は、診断が紛らわしい疾患のリストを添付し、今年(2012年)の4月に、詳細な報告を日本リウマチ学会のホームページに公表した。

世界の約55カ国で「Treat to Target」の考え方を採用

 世界的に、分類基準の見直しの機運が高まった背景には、「Treat to Target(目標に向けた治療実現)」という新しい考え方があるという。「例えば、糖尿病ならHbA1cの値を6以下に保ちましょう、ということが医師の間の共通の目標です。患者さんもそれを共有している。ところが、関節リウマチにはそうした共通の尺度がない。それを何とかしようと、Treat to Targetが提唱され始めました」
 診断が下ったら、メトトレキサートで治療を開始、その後3カ月ごとに効果判定を行い、疾患活動性を評価し、効果が十分でなければ、治療薬の見直しを行う、という一定の手順が定まった。
 一方、現実的には、せっかく早期に診断できても、痛みだけやり過ごせばよいと考える患者も少なくない。若い人や、仕事に忙しい、子育て真っ最中といった患者には、MTXといった副作用が強い薬の使用に踏み切ることができない人もいる。「できるだけ詳しく、丁寧な説明を心がけていますが、その人にとって初めてのリウマチだと、10年後15年後の自分の姿、生活を想像できないのでしょうね」。さらに、生物学的製剤の価格の高さも、障害の一つだ。寛解導入後の治療薬の中止については、さまざまな研究が進められているが、まだ手探り状態だ。「受けられるメリットが大きいうちに、治療を始めるには、それを支える社会的なシステム、制度作りも必要です」
 関節リウマチは、自分の免疫が自分の組織を誤って攻撃してしまう自己免疫性疾患である。患者が最初に気付く自覚症状は、関節のこわばり、腫れ、痛みだ。多くが整形外科を受診する。しかし、主婦健診などの血液検査でリウマチ因子が発見された場合には、内科へと送られる。しかも、リウマチを担当する内科は、施設によって、アレルギー膠原病内科、免疫・アレルギー内科、リウマチ・膠原病内科、リウマチ内科など、さまざまな呼ばれ方をしている。「単に呼称の問題だけでなく、『リウマチ学』を扱う内科としての統一的な教育システム、臨床体系が明確でないことを示しています。これは、根本的な大課題です」
 竹内先生が医学部で勉強していた80年代は、免疫学で次々と新しいことが発見され、それが臨床にもたらす果実も充実していた。「過剰でも、足りなくても問題。バランスが問われるところが面白さ」。そうした免疫学の成果が反映される疾患として膠原病を選び、数々の臨床研究を精力的に進めてきた。
 23年間という長い年月を過ごした埼玉医大から、3年前、慶應義塾大学へ籍を移した。伝統ある母校で、さらにこの領域を発展させ、人材育成を推進したいとの決意をもっての異動だった。つい最近(2012年8月6日)免疫統括医療センターが改装オープンしたばかりだ。50数床を備え、がんの化学療法とともに生物学的製剤の通院治療を行う。基礎と臨床の架け橋を行き来しながら、リウマチ治療、自己免疫疾患治療に励む竹内先生の実践を支える環境が整っている。
 座右の銘は「巧言令色 鮮矣仁(こうげんれいしょく すくなしじん)」。終始、質実、謹厳な態度でリウマチ治療の進歩を喜び、課題に心を痛め、患者のQOLに心を配る竹内先生に、まさにふさわしい言葉だ。

1980年、慶應義塾大学医学部卒。同大学病院内科助手を経て、85年よりハーバード大学ダナ・ファーバー研究所留学。その後、埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科教授、同大学副学長などを経て、2009年8月より現職。リウマチ性疾患の専門医として、早期診断早期治療による寛解導入を目指し、数多くの臨床研究を実施。目的は患者のQOLの維持・向上、国際的コンセンサスに基づく関節リウマチに対する有効な治療戦略の普及に注力する。

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